オーツミルクはミルクと名乗れるのか?


最近、「オーツミルク」は植物性なのに「ミルク」なの?と聞かれることがあります。確かに、一般的に「ミルク」と言えば牛乳を思い浮かべるので、少し分かりにくいかもしれません。

実際、海外の乳製品業界からは「植物由来の飲み物が『ミルク』を名乗るのはおかしい!」という声が上がっています。一方で、健康や環境を意識する人々の間で、オーツミルクはどんどん支持を集めています。
この記事では、「ミルク」の定義を紐解き、オーツミルクが「ミルク」というのにふさわしいのか、法的な観点と実用的な視点から探ってみたいと思います。



◾️「ミルク」の定義とは?
まず、「ミルク」を辞書で引くと「牛などの哺乳動物から得られる乳」とあります。日本では食品衛生法でも、「乳」とは牛や羊などの乳汁を指し、「乳飲料」や「加工乳」には厳しい基準があります。つまり、法律的には「ミルク=動物由来」が前提になっています。

一方、オーツミルクは基本的にオーツ麦と水から作られ、動物由来ではありません。つまり、辞書や食品衛生法の「乳」には当てはまらず、「オーツ『ミルク』と名乗っていいの?」という疑問が出てきます。


◾️植物性ミルクの法律上の取り扱い
ここで「植物性ミルク」という概念を見てみたいと思います。植物性ミルクは、ナッツ(アーモンド)、穀物(オーツ)、豆類(大豆)などを水と混ぜて作った飲料の総称で、見た目が白っぽく、牛乳の代わりとして使えることから「ミルク」と呼ばれています。でも、この呼び方は国によって議論の的になっています。
例えば、EUでは「milk」を乳製品以外に使うことが原則禁止されており、「oat milk」はNGで、「oat drink」と表示することがルールとして定められています。

アメリカでは乳業団体が「植物性ミルクは紛らわしい!」と訴えたこともありますが、2023年、FDA(米国食品医薬品局)が植物性ミルク製品に「milk」の表示を正式に許可しました。
一方、日本では明確な規制がなく、「オーツミルク」や「アーモンドミルク」が自由に流通し、市場では「ミルク」として受け入れられています。


◾️オーツミルクが「ミルク」と呼ばれる理由
では、なぜオーツミルクは「ミルク」と呼ばれているのでしょうか。いくつか理由を考えてみます。
まず、見た目と使い勝手。オーツミルクは白濁していて、コーヒーに混ぜたり、シリアルにかけたり、牛乳と同じように使えます。
次に、口当たりと風味です。オーツ麦の自然な甘みとクリーミーさが、乳製品に近い感覚を与えてくれます。

また、健康志向やヴィーガン需要が高まる中、「植物性ミルク」というカテゴリが確立されたことも、理由の一つと考えられます。
さらに、オーツミルクならではの特徴として機能性の高いβ-グルカンという食物繊維が含まれていることや、牛乳より環境負荷が低いのもポイントです(こちらの記事参照)。こうした魅力が、「ミルク」の枠を超えた新しい価値として支持されています。



◾️オーツミルクは「ミルク」にふさわしいか?
それでは、オーツミルクは「ミルク」と名乗るのにふさわしいのでしょうか?
賛成派は、実用性と消費者の認知度を重視します。カフェで「オーツミルクラテ」と注文すれば、誰もがそれを理解します。機能的に「ミルク」として使えるなら、名前もそれでいい、という考え方です。
一方、反対派は伝統的な定義で考えます。栄養面でも、牛乳に比べタンパク質が低いなど、「ミルク」と呼ぶには物足りない、という声もあります。

 

今、「ミルク」の定義が時代と共に変わりつつあると感じます。昔は牛乳しかなかったものが、現在は選択肢が増え、オーツミルクは新しい「ミルク」の形を築いているのではないでしょうか。
 


◾️まとめ
オーツミルクが「ミルク」と名乗れるかどうかは、法的な線引きとオーツミルクの実用性の間で揺れる問題です。伝統的な「ミルク」は動物由来ですが、植物性ミルクの普及でその境界は曖昧になっています。
オーツミルクは見た目や用途で「ミルク」らしい一方、環境や健康へのメリットで独自の地位を確立しています。定義にこだわるか、実用性を優先するか、答えは人それぞれだと思います。

次にオーツミルクを手に取るとき、あらためて「ミルクって何だろう?」と、少し考えてみるのも面白いかもしれません。